交通外傷で胃結腸間膜動脈と副右結腸静脈から出血性ショックとなった患者の手術

2022年1月17日 0 Comments

夜勤の朝方の話でした。

交通事故でファスト陽性と診断され、緊急開腹手術の患者さんが来ました。

予定術式は開腹右半結腸切除でした。

ファストは以下の部位の観察でした。

今回はモリソンのあたりとダグラスに出血があったそうです。

来た時のバイタルサインはというときわめて安定しており、

HR60代でNSR 血圧130mmhg/70mmhg SPO2  98%でした。

患者さんの胸部にはシートベルト痕があり、右鎖骨が折れていました。

外傷のわりにはまったくバイタルがぶれずそんなに出血をしてないのではないかなぁと思ったわけです。

しかし、実際に開腹してみると、すぐに網嚢の中に血腫が大量にたまっており、

その血腫だけで2000mlくらいありました。

その血腫を取り除いてからが大変で胃結腸間膜の動脈の出血はあるのですが、

どの場所から出てるのかはわからない。

加えて、血餅がとれたことで出血は助長され、あれよあれよ血圧は50mmhgまで下降し、すぐに急速輸血が必要な状態になりました。

出血点がはっきりとわかないため、ベテラン外科医の先生が、

すかさず、中結腸動脈を遮断したわけです。

出血量はこの段階で血腫含めて5000mlでした。

すると、血圧は70mmhg~80mmhgまで上昇し安定傾向となりました。

そこでようやく右半結腸切除をすすめていくことができました。

ところが、中結腸動脈の遮断を解除してから、すぐに再び出血傾向となり、

今度はどこだ?となったわけですが、

表題にあるとおり、副右結腸静脈からの出血をしていました。

結果的に中結腸静脈を結紮して、処理したところ出血はコントロールがつきました。

出血合計7500mlとなりましたが、なんとか輸血療法で持ち直すことができました。

ベテラン外科医の先生はやはり判断が早くいなぁと思いました。

開腹して網嚢に血腫があった段階で、すぐに中結腸動静脈の遮断は念頭にあったようでした。

あの遮断がなければCPAもあり得たわけで、そんな中でも動じることなく冷静にできたのはやはり場数なんでしょうか。

さて、器械出しはどうすればよかったのかということですが、

外傷などで、腸間膜動脈や胃結腸間膜動脈の損傷が複数考えられる場合は遮断かんしを準備する必要があるわけです。

代表的なものにサテンスキー血管遮断かんしがあると思います。

このかんしで中結腸動脈を遮断できました。

 

先端は上のような構造になっています。

開腹に必要なものはもちろんですが、やはり出血をコントロールするためには遮断かんしが必要です。

心臓血管外科などではたくさん使いますし、形状もいろいろとあります。

遮断かんしについては今度はゆっくり掲載していきたいと思っています。

外傷=遮断かんしの発想でいいと思います。

 

 

 

 

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