家族歴に筋ジストロフィーがある患者の全身麻酔
今日は筋ジストロフィーと麻酔(特に筋弛緩剤)に関係したお話です。
朝のミーティングで患者本人ではないけど、家族に筋ジス患者さんがいて、
その場合、筋弛緩剤はどうしたらいいのか?という話になりました。
私の手術室看護師の経験をたどってみると、
それはマスキュラックス(ベクロニウム)までさかのぼります。
ロクロニウムの登場によりうちからはなくなった筋弛緩薬です。
昔、術前診察ではわからなかった重症筋無力症の人がいて、
麻酔導入時にマスキュラックスを使用しました。
TOFウォッチは当時からあって使用していたのですが、
初回投与から2時間たっても3時間たっても一向に筋力がもどらないということがありました。
最初はTOFウォッチの不具合かと思っていましたが、
いざ手術が終わってつけなおしても一向に数値があがりません。
当時、スガマデスク(ブリディオン)なんてありませんでした。
アトロピンとワゴスチグミン(アトワゴリバース)が主流でしたが、
これを1:2とかで混注して自作していたのです。
しかし、ブリディオンとは比較も無くすぐに効かず、
結局30~40%戻ったくらいでした。
結局抜管まで時間がかかるということで別部屋に移動して(リカバリールーム)
5時間後くらいに抜管しました。
そのイメージが強烈に残っているため、筋ジスなどに筋弛緩は注意が必要とやきついています。
しかし、今はロクロニウムとブリディオンがあるため、
大概は拮抗できていると報告があがっているようで、その危機感などはなく、
やり過ごされているのかなぁと思いました。
さて、では今日の患者さんというと、
ブリディオンで自発は出て、抜管したのですがどうにももうろうとしている。
従命もいまいちという具合でした。
結局、麻薬の残存の可能性が高いということで、
ナロキソン(オピオイドの拮抗)を使用したところすぐにしっかりとしてきました。
論文なんぞ確認したところ、やはり筋ジス患者さんの再挿管の論文があり、
その理由は麻薬の残存と結論づけられていました。
麻酔科もベテランだったので、筋弛緩ばかりにとらわれずすぐにナロキソンを使用したのは
さすがだなぁと思いました。
何事もなく手術が終わるのは麻酔科の腕もいいということですよね。
ありがたみはなかなか伝わらないことが多いですが。
それを後輩たちに伝えるのはベテラン看護師の役割なのかもしれません。