急性アルコール性膵炎に続発する腸管壊死
今日はアルコール依存症の患者さんが腸管壊死をきたして左半結腸切除となったお話です。
腸管壊死で大腸切除をする患者さんとは結構出会います。
たとえば、血栓症だとSMA血栓症などがあげられますが、
この場合は小腸から上行結腸などの広範囲の壊死をともなって、
色調の悪い(壊死を起こしている)箇所の切除をすることになります。
これはSMA(上腸間膜動脈)がループ構造になっているため、
血栓がつまりやすいという理屈でした。
しかし、急性膵炎に続発して腸管壊死をしたと聞いて、
いまいち作用機序がわからずパッと思いつきませんでした。
調べてみると、1つ機序がわかりました。
重症急性膵炎をきたして、そこから膵液(消化酵素)が染み出していく。
膵臓は解剖学的には後腹膜臓器にあたり、その前面には横行結腸があります。
膵臓から染み出した酵素はどんどんと波及していって、結腸間膜を経由して広がっていきます。
炎症を起こした組織は浮腫となり、その結果として、
腸間膜血管や腸管粘膜下の血管に血栓を生じ、その区域に一致した
虚血性腸炎あるいは腸管壊死を発症するとのことです。
要するにNOMIです。NOMIからの壊死ということになるかと思います。
一番、炎症が広がりやすい場所は脾湾曲部らしく、
今回の患者さんも例にもれず、膵臓から湾曲部にかけて炎症が著明で、
さらに下行領域にも広がっていました。
結果として、左半結腸切除となりました。
小腸も一部色調は悪かったのですが、
セカンドルック(後日、開腹術を行う)こととなり、閉腹となりました。
2日前まで普通に生活をしていた方だったのですが、
膵炎発症から壊死はあっという間のことで、セカンドルックに来れれば助かりますが、
たちあがらなければ、救命は難しい状況となっていました。
アルコールを飲む方が悪いと思うかも知れませんが、
私も少なからず晩酌しますので、人のことは言えず、
明日はわが身だと、危機感を覚えました。
お酒はほどほどにということですね。