腹腔鏡下肝前区域切除の器械出し
本当に器械の進歩はすさまじいもので、肝前区域切除が腹腔鏡でできる時代がくるとは思いもよりませんでした。
もちろん術者の卓越した技術、経験も必要なんでしょうが、
やはり器械や知見の進歩がそれを実行させているなぁと思うわけです。
とりわけ、ウォータージェット電気メスの存在、そして、何よりもICG(インドシアニングリーン)
による腫瘍や血管の同定ができることがそれを実現させているようです。
それはさておき、では器械出しはというと、
手術自体は開腹よりもずっと少ない器械を出すので、読みやすいは読みやすい。
遮断時などの特有の緊張感はそのままですしね。
グリソンやら、門脈右枝、左枝やら中肝静脈やらP5+P8やら・・・。
まぁ、解剖をアップでみれるのはいいですよね。
ただ、開腹よりも腹腔鏡のほうが、術野のワーキングスペースがせまく正直出しにくいんです。
いちいち、スコピストの手を気にしながら腹腔鏡用の長い器械を出すのはすこし疲れます。
ジェット電メスもサクション詰まりなどで手術がとまったり、
手術室に長いこと身を置いている立場からすると、
開腹の方が器械出しをしている実感があって、テンポも良くて楽しいんですよね。
「パシッ」ってならせる感じとかは「あぁ、器械出ししてるなぁ」と思えるし。
でもこういう難度の高い手術がどんどん腹腔鏡下になったり、
ロボット手術にとってかわったりと
昔ながらの器械出しができる手術がどんどん減っていっているんです。
そのうち器械出しもロボットなんて時代もくるんでしょうし、
そもそも癌治療が飛躍的発展して、手術療法自体が必要なくなったら、
私たちの存在がいらなくなる時代もくるのかもしれないですね。
そう思うと少し寂しく思う、今日この頃です。