腹膜炎から続発する貧血のメカニズム
別の仕事で色々と自己学習のため基礎から学びなおしていたら、なかなか投稿できませんでした。
今日は慢性腸炎から腹膜炎を起こし、その後敗血症となって貧血が生じたお話です。
敗血症になるとなぜ貧血がおこるのか?と後輩に聞くと、細胞が破壊されるからですか?
と返されたわけです。んー。ありそうだなと思ったわけです。
さて、どうだったか。炎症で血管透過性が亢進するのはわかります。
その結果として、細胞内にリンパ液などの免疫などの水分が逃げるのは理解できます。
しかし血液の中の赤血球やヘモグロビンが逃げているわけではないので、
ヘモグロビンは下がって貧血というのはおかしいのではとふと思いました。
調べてみると出血炎といわれる病態なら、赤血球が透過しているらしいのですが、
今回のような腹膜炎の場合は浮腫んではいるけど出血は伴っていない。
発赤のような感じが多少みられるかなぁという具合でした。
ではなぜ貧血になるかということで、改めて貧血について深堀していくと、
上記の図のようにヘム(鉄)とグロビン(たんぱく質)がくっついてはじめて
「ヘモグロビン」となるわけです。
「鉄」がとにかく必要であるこいうことですね。
ところが慢性炎症がおきてしまうと、肝臓からのペブチドホルモンであるペプシジンが
出てしまうと、鉄代謝が抑制する働きがあり、
結果的に身体の中の赤血球と結びつける鉄が不足するという状態になります。
それが貧血になるということです。
このペプシジンはマクロファージ(白血球)のフェロポーチンを抑制することで、
トランスフェリンが少なくなり、さらに造血機能の低下して、赤血球数も減っていくという
メカニズムのようです。
ただ、鉄欠乏性の貧血ではないので、
鉄を補ってもあまり意味がなく、あくまで感染源なっている腸炎の爆心地を
除去して、適切な抗菌薬を投与すれば、ペプシジンの分泌も抑制されて、
鉄が通常通り利用でき、貧血を改善できるということになります。
今回の患者さんは入室時の所見で網状チアノーゼもあったので、
その関連性も今後ふれていきたいと思います。