食道癌手術時の気管損傷時に手術室看護師が考えること

2021年12月21日 0 Comments

今日はみんなが顔が青ざめるようなできごとがありました。

食道癌の根治術の時にあやまって気管膜様部を損傷してしまったのです。

麻酔科のほうでいきなり一回換気量が半減しました。EtCo2も一気に120くらいまで上昇するイベントが発生しました。

気管膜様部に穴があいたことで、陽圧換気ができなくなり、換気量半減するのはよく理解できます。

EtCO2が急上昇するのは、食道癌手術時に炭酸ガスで気胸をかけるからです。

なので、すぐに気胸を止める必要があるわけです。

これが重要だと思います。気胸(エアシール)をとめるということ。

麻酔器の方からも酸素などの空気が外に漏れ出るため、この段階で電気メスを使うことが危険を伴います。

すぐに気管損傷個所の確認を行い、気管に2mm程度の穴があることがわかったので、

ロボット下で気管膜様部の応急的縫合をプローリンを用いて行いました。

今回は穴が小さく応急的に縫合できたので良かったのですが、もし縫合ができない場合どうすればよいのか話合いました。

それは濡れたガーゼをたくさん穴の部分においてくるということです。

VATSもしくはRATSなので、ポートからガーゼを突っ込んで密閉するということになります。

器械出しとしてはハーフガーゼやあるは1枚ガーゼをびしょ濡れにして、

12mmのポートに入れるアシストが必要ということでしょうか。

応急的処置を行い、換気要件を回復することできたら、

食道癌の手術が続行可能かどうかの判断をすることが必要になります。

今回はダイレクト縫合により、回復できたので食道癌の手術は続行できたのですが、

おそらくガーゼなどの応急が必要なら、その段階で手術の続行は不可となる可能性となり、更なる気管修復術が必要になります。

その場合、濡れガーゼだけでははずれてしまう可能性があるため、

挿管チューブを左主気管支にすすめて、片肺挿管にしてしまうということです。

もともと分離肺換気ですから、ブロンコファイバーガイド下で左にすすめて換気を安定させる必要があると感じました。

そののちに、慎重に体位変換を行い、

根治的な気管修復術。今回の場合は広背筋皮弁あるいは大網充填術を行うことになります。

広背筋皮弁はよく乳房再建の時に使用される術式ですが、それを気管修復にも使えるとういうことですね。

ということで、修復に使うものとして広背筋なら形成外科が使う器械の準備、

大網なら、腹部外科が使うもの準備が必要かと思いますので、その準備が必要となります。

しかし、少しの穴であればもっと良い方法ないのでしょうか?

手術室に長くいて、応用できそうな手術といえば、例えば、耳鼻科の鼓膜形成の場合、側頭筋を筋膜パッチを使用します。これは遊離組織ですが、別にくさりません。

あるいは脳外科の手術のときに皮下脂肪を充填することもします。

子供の心臓外科の場合は自己心膜パッチをすることもあります。

あるいはタコシールを使ってパッチをあてたり、ゴアテックスシートという選択肢はないのではないでしょうか?

そういえば、遊離組織はなぜくさらないのか???そこについては深く知る機会がなかったので今度、他科の先生に聞いてみようと思います。

とりあえず、事なきを得てよかったと思います。

 

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