d-マンニトールが使えない血腫除去術

2022年3月12日 0 Comments

脳内出血のため自宅で丸1日倒れて発見された方が来ました。

救急外来に来た時は極度の低体温症ということで、末梢がとても冷え切っていました。

復温をしてから、CTをとったところ、脳内出血は側脳室まで穿破して、さらに

モンロー孔から右までにまで波及しているような状態でした。

すぐに緊急開頭術となり、頭蓋骨をはずたところで、硬膜がもりもりにもりあがっているような状態でした。

脳浮腫は著明にみられているというような様態でした。

いつなら、ここでマンニトールを全開で落として!なんて指示が飛ぶのですが、

今日はこの患者さんの腎機能が悪いということが事前にわかっていたので、

マンニトールの使用は行いませんでした。

さて、なぜ腎機能が悪い人はマンニトールを積極的に使用しないのだろう?と思いましたが、まったく思い出せませんでした。

マンニトールといえば、浸透圧利尿薬であり腎血流量が増大することで相対的に利尿を促すというようなものだったと思います。

では浸透圧利尿薬となんぞや???となるわけですが…。

血中浸透圧を極端にあげるということになります。

具体的には浸透圧比は5となっており、生理食塩水の5倍ということになります。

ボルベンとかでも浸透圧比が1.1とかですから、

すごい量の水を引き込むことが想像できます。

おもに間質液となるかもしれませんが、それだけでなく細胞内からも引き込むということになります。

として、細胞内は脱水の状態になるため、結果的に脳実質も縮小するという仕組みなわけです。

ただ、細胞から大量に引き込んだ水はそのまま腎血流を増大させ、糸球体にて濾過します。

濾過された尿は尿細管へと運ばれるのですが、水の量がとてつもなく多く、

さらに再吸収も抑えられるため、そのまま尿中へ排泄されるということになるようです。

脳外科の術後尿量は2000mlくらいですますから、それだけ細胞から引き込んでいるということがよくわかります。

ただ、これは腎臓が正常に機能している場合に限るわけで、

腎機能が低下している(糸球体濾過量が減少している)場合に使用すると、

引き込んだ水が結果的に行き場を失い、血管内に残る。そうすることで血圧を上昇される恐れがあります。

そうなると、出血が増大してしまう恐れも出てきます。

さらに急性腎不全となるリスクも伴ってくるため、投与するには十分に注意が必要となるわけです。

 

 

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