親知らず(埋伏智歯)の抜歯術の器械出し
私の働く病院では15年以上前から親知らずの抜歯を全身麻酔下で行っています。
そのくらいのときは町中の個人の歯医者さんでも親知らずの抜歯をやっていたように思います。
当時の記憶を思い起こせば、親知らずを抜くために全身麻酔をかけるなんて大げさだなぁと思っていたと思います。
しかし、15年以上たった今では親知らずの抜歯は全身麻酔でやることが当たり前になってきていると思います。
もちろん、全てというわけじゃなくて、埋伏智歯などですが・・・。
では、なぜそうまでするかというと下歯槽神経麻痺や舌神経麻痺のリスクがあるからとされています。
具体的には下唇から下顎や口腔内の粘膜にかけてピリピリとしびれたりする症状のこといいます。
抜歯のときに神経を傷つけてしまっておきる合併症のひとつとされていますね。
なので、画像をとって神経に近い場合は全身麻酔あるいは静脈麻酔下で動かないようにして手術を行っています。
もちろん局所麻酔も併用で歯科用のE入り2%キシロカインを使います。
片方に5.4ml(カートリッジ3本)ですから結構な量です。
その後歯肉を切開して、骨膜剥離子で歯肉をよけていきます。
ドリルで歯を削り、分割します。
バーは先端のリンデマンバーや分割バーを使用しています。
その後ヘーベルで歯の周囲へアプローチしていきます。
抜歯できそうになったら、
抜歯かんしで取り出します。
あとは歯根端がのこるので、それはえいひなどで除去します。
歯根端からは出血しやすいので、ボスミンやサージセルなどを使用して、止血します。
最後に閉創、下の親知らず部にはドレーンを入れて終了となります。
さて、この下歯槽麻痺がおきた場合ですが、訴訟に発展して過失が認められると、
最大で1000万くらいの請求をされるようです。実際の判例では300万くらいのが出ていました。
そう考えると、何も知らずに町の歯医者さんでかんたんには抜けないなぁという風潮になりますよね。
そういう事情からか、口腔外科医がいる病院に紹介されるのが普通になったということかと思います。
これも時代の流れなんでしょうね。