左主気管支ー食道癌ろう孔に対する気管支ステント留置術
今日は器械だしというよりは器械だしがない手術の準備のお話です。
私の病院ではハイブリット手術室(透視ができるカテ用の手術室)があります。
食道癌の末期で癌が左主気管支まで及んでいるため、穴をとじる目的で
気管支ステントを留置するということにになりました。
もちろん根治療法ではなく、対症療法です。
しかし、よくある手術でもないので、これまでやってきた麻酔の管理や手術の経験による応用が必要となる手術です。
この手の手術の場合、器械だしとしてはやることがあまりないので、
外回りがひととおり準備をします。
なので、麻酔をどうしていくのかを調整するほうが大切でした。
最初はステント側の肺を虚脱される必要があるのか考えましたが、
気管支に対しての手術なので、DLT(ダブルルーメン)は必要ないということがわかりました。
むしろ、手術の操作上は太いチューブの方がよく、女性にも関わらず
8.5mmの挿管チューブとなりました。
その段階で、しっかりと声門を観察したいとのことで、
マッキントッシュではなくマックグラスを選択的に使用しました。
そして重要なのが、操作に必要なコネクタです。
通常のLコネクターだと接続を外して、気管支鏡を入れるとリークしてしまうので、その間換気ができなくなります。
そこで、写真にあるように青いリングの部分がゴムっぽく柔らかくなっていて、
気管支鏡やデバイスを入れると穴にフィットして、換気をしながらできるというものです。
気管支をいじるので、筋弛緩と咳そう反射をおさえるためフェンタニル麻薬も使用となりました。
手術がはじまると呼吸器内科医が数人きて、各種気管支ファイバースコープを使用(主に細いタイプで4.2mm程度)して、左主気管支のろうこう部を観察しました。
腫瘍が盛り上がってきていて、一部に孔があいて交通している状態でした。
そこに0.035の180cmのガイドワイヤーを通して、ろうこう部を通過させます。
ガイドワイヤーは第二分岐直前まですすめます。
これを透視でみて、わかりやすいように18Gのピンク針(キャップつき)を身体の表面にビニールテープで貼っていきます。
第二分岐手前、ろうこう部の終末、ろうこう部の起始部の3箇所でした。
ガイドワイヤー先が良い位置に入ったら、そこで固定をして、
気管支鏡を抜去します。
あとは金属ステントデバイスをガイドワイヤーごしにすすめていき、
ステントマーキングとピンク針の位置をあわせて、
ステントを広げていきます。今回はバルーンの使用は行いませんでした。
最後に気管支鏡で再度確認をして、分岐をつぶしていないことを確認して終了となりました。
準備に必要だったものは
ガイドワイヤーを入れるためのベースン(小さいの)
滅菌製盛水
サクションチューブ
オリブ油
ガーゼ
くらいのものでした。
気管支の内腔径をはかるのに生検かんしを使用しましたが、これはもっと良いものがあるかもしれません。
内腔径を図るときにバルーンを参考にできる対応表があれば良いのかもしれません。何ml入れると径が何cmとか。
それはさておき、ステントがいい位置に決まりましたが、
主気管支の長さが一般的には5cmくらいで、それに対して4cmのステントですから、結構ギリギリをせめる難しい手技を透視のみでやるというのは
本当に難しそうに感じました。
あとは抜管後におきたエピソードですが、
ステントの刺激によるものと思いますが、がいそうとにかく止まりませんでした。
結果的に麻薬で反射をおさえるのが妥当ということで、
持続フェンタニルを投与して帰ることになりました。
自発呼吸下でやることもあるようですが、今日のみてしまうと
できるのかなぁと懐疑的にはなってしまいますね。大変な気がします。