扁摘後の後出血と思いがけない止血物品
今日は本当は静かな部屋で1日手術をやる予定だったんです。
しかも朝一番の手術じゃないので、午前中は器械出しの準備を手伝ったりとゆっくりした時間を過ごせると思ったんです。
金曜日だから、これくらいが楽でいいなぁと。
しかし、すぐにその静寂は一瞬でかき消されてしまいました。
リーダーさんがあわてて、私を呼びにきて、「扁摘後の後出血でバイタルが崩れそうな人がいるので、緊急手術の対応を御願いします」と。
「ぐぬっぅ。」と思いましたが、人がいないようなので仕方ない。
話を聞くと一昨日前に扁桃腺をとった人で術後からじわじわと出続けていたようです、
出血量としては概算で500~600mlと。
若い男性なので、ただちにどうこうなるというわけじゃないんですが、
当の本人は憔悴しきっており、しかも迷走神経反射が起こったあとのためかひどくぐったりとしている。
まぁ、急いで手術室に入室してもらい、麻酔も大変ではあったが、なんとか。
体位もとれて・・・。いざ止血術へ。
そして、血餅(血がかたまって、おもちような大きさになったもの)を取り除くと動脈性の出血がみられる。じわじわと出続けている。
扁桃腺なので結紮などを最初にするのではなく、とりあえずバイポーラで止血となります。
しかし、それだけでは再出血の可能性がある。
ということで、あらかた止まった後に、ネオベールシート0.1mmを2~3cm角にきったものと
5cm×5cmを準備して、それをベリP(ベリプラストP)のフィブリン液とトロンビン液で固定をしました。
それでは接着が弱いと思い、補強として4-0PDS(RB2)にて補強縫合となりました。
実はこのネオベールやベリPは脳外手術では毎度使うのですが、耳鼻科で使ったのを見るのははじめてのことだったので、少々驚きました。
なんせ口の中にベール状の膜とのりでパッキングされて縫われているわけですがから、
術後は相当に違和感があるだろうし、なによりも動きのある部分なんで剥がれ落ちないかなぁと
心配になるわけです。
製品説明書をみるとネオベールは吸収されるまでに15週かかるとか。
約2ヶ月間このままかぁ。辛いだろうなぁと。
まぁ、それよりも前にとれてしまいそうですが・・・。要は止血がしっかりとできていれば取れてしまってもいいのでしょうけど…。
ちょっと、思いがけない手術を経験しました。
あらためてネオベールの吸収時間を勉強できて、結果良い1日となりました。