尿が腹腔内に漏れたあとの術後の内臓痛
昨年の話になるのですが、年の瀬にロボットアシストで代用膀胱を作るという1年に数回あるかないかの手術につきました。
私の病院では膀胱がんの手術で一番多くやっているのが回腸導管です。
ただ、回腸導管だとウロストミーの管理(ストマ)となるため、
比較的若い患者さんが膀胱がんになったときは自然排尿を希望され、
代用膀胱を選択されるイメージが多いです。
もちろん、がんの進行や手術の侵襲に耐えられるかが事前に検討されますが…。
代用膀胱は回腸末端から数10センチ離れたところから50~60cm切り離して、
回腸を切り開いて、膀胱のように縫い上げます。
この時に、尿管と尿道を吻合するのですが、
尿管の長さが足りずに、小開腹では吻合できないことがあります。
その場合、縫えるところまで縫って、膀胱を腹腔内に戻してからロボットで尿管と尿道を吻合するという流れになります。
回腸導管の時などはシングルJチューブをいれて、体外に排出されてやるのですが、
今回は膀胱に戻してから、吻合するまで、しばらくの間、尿が腹腔内に流れていました。
手術はその後無事に終えたのですが、
抜管してから、強いおなかの痛みを訴え続けていました。
硬膜外麻酔が効いてないことも考えられましたが、
持続でフェンタニルをいっても、創部の局麻をしてもまったく効果がありませんでした。
患者さんいわく、「おなかの奥の方が痛いと」と言っていました。
ウロの先生に聞いてみると「おしっこがおなかに中にもれると痛みを訴えることがわりとあると」
メカにニズムは何か聞くと、「化学的変化による症状」というのです。
そういえば、胆摘の時も胆汁がおなかに漏れると、胆汁酸によって、
脂肪が解けて、お腹全体が痛いという話を聞いたことがあります。
尿はというと…。尿もやはり酸性。Phは6.0。
やはり脂肪が融けて痛みが出るのかなぁと疑問に思いました。
文献を調べてみると、
「尿性腹膜炎」というキーワードは出てきますが、
これは感染がついた尿が出た場合で今回のものとは違うような気がしました。
はっきりとした答えはわからずじまいなのですが、
少なくとも今回、吻合後などに腹腔内洗浄をしていなかったので、
次に同じような事象に出会ったら、
腹腔内洗浄を提案しようかなと思いました。
それで術後の腹部痛がなければ、それに越したことはないと思うので。