TU-EKでおこりうる急激な血圧低下

2021年6月11日 0 Comments

今日はウロの臨時手術のお話を1つ。

膀胱癌からの出血で膀胱タンポナーデになった患者さんが手術にきました。

入室したときから腹部の膨満があり、あきらかに血がたまっている様子。

貧血の症状こそないが、脇とかをさわるとすべすべしていて、

しっとりならいいのですが、すべすべしているんです。

明らかに脱水な様子でした。

そこでTU-EK。膀胱鏡下止血術を行うことになりました。

あまり聞きなれませんが、要するに膀胱鏡下洗浄止血術ですね。

器械などはTUR-BTに準じるもので大丈夫ですが、

ひとつだけジャネー洗浄器というものを使います。

これは膀胱内のコアグラを除去するための、洗浄器でこの手術で使う特徴的な

器械ですね。私はよく「ジャネー洗浄器じゃねー?」なんて

言って覚えています。余談ですが・・・。

さて、話はタイトルにもどります。

麻酔は脊椎麻酔です。

高比重マーカインを使用したところ、数分後にあきらかにHR190と高度な頻脈傾向となり、

血圧も50mmhgまで下降しました。

麻酔レベルはTh6まで上がっていました。

ところが、この手術申し込み時に麻酔科管理を選択していなかったため、

外回りは大忙しとなります。

ボリュームが足りていないところに、脊椎麻酔をしたことで相対的に血液量が不足となり、

上記の状態になったと判断できました。

なので、すぐに輸液を全開にして、滴下。

輸液も酢酸リンゲル液から代用血漿剤(ボルベン)に変更。

エフェドリンを10mg投与し、まず昇圧を図りました。

入っていた静脈ラインが22Gのため、あまり滴下スピードがあがらないため、

30mlのシリンジでポンピングを開始しました。

200ml程入ったところで、昇圧剤の反応もあってか、HRは110台まで安定し、

血圧も70mmhgまで回復しました。

もちろん、麻酔科がいませんし、いちいち術者に確認をとる余裕もありませんから、

声かけだけして、外回りの判断のみでこれらをやります。

総輸液量は1800ml程となりました。ポンピングまでするの?という感じでしたが、

しなくても時間がたてば戻っていたかもしれませんが、

やはりHR200近いのは看過できないので、結果良かったかと思います。

病棟では1時間で1500ml以上の輸液をいくという感覚はないでしょうが、

救命や術場ではわりとよくみる光景かと思います。

これは全身麻酔時でも脊椎麻酔でもあるいは硬膜外麻酔でもおきうることですが、

相対的なボリューム不足による血圧低下時はやはりまずは輸液負荷と輸液の選択が重要と思います。

もちろん心臓などの持病がないことは確認しておかなければなりませんが。

このあとバイタルサインは落ち着き、無事に止血でき終了となりました。

術前の検査ではHbが10くらいあったのですが、おそらく止血時にまた出たでしょうから、

輸血療法も追加となりました。手術室でクロス血を提出し、病棟でいってもらうことに。

外回りなどの手術のこともやりつつ、バイタルのこともやりつつととにかく忙しかったです。

TU-EKはTUR-BTよりもリスクが高く、急変しやすいことを改めて学びました。

 

 

 

 

 

 

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です