VATS手術後の同側部肩痛
胸腔鏡下肺葉切除後の肩の痛みについては長いこと議論されてきていると思います。
日本手術室看護学会の演題でも毎年のように挙げられては
はっきりとした原因がわからないまま終えているような気がします。
喫緊の10年くらいの抄録を読んでも体位性で片付けられている事が多いような気がします。
最近、この痛みについて再度調べ直す機会があって知見が広がったので、
ここで少し触れていきたいと思います。
原因については、
手術体位に結論づけるものや、
神経損傷によるもの、
関節への負担、
開胸操作によるものなど。
実はこの同側部肩痛については世界的にも問題提起されてきたようで、
海外の論文をdeepL翻訳ソフトを使いながら、読み解いていくと
一番の原因は横隔神経による痛みではないかとの説が有力であるとわかってきました。
ではこの横隔神経はどこから由来するかというと頸椎神経c4−5からです。
そしてこの横隔神経はずーと首から横隔膜まで枝分かれし、横隔膜まで伸びて終えます。
この枝は胸膜にも伸びていて、
胸膜を開けたり、横隔膜へドレーンが当たったりすることで、
神経を刺激して激しい肩の痛みとして認識するようです。
腹部外科は割と認知されていて、今回のこの肺手術後の肩の痛みについて、
腹部外科、心臓外科、胸部外科、整形外科、耳鼻科、麻酔科などの話を聞いたところ、
腹部と胸部外科、整形外科の一部の医師からは横隔膜の意味たは肩の痛みとして認識すると認知されていました。
開胸手術では高頻度に発生し、完全VATS手術だと優位に減少する事がわかりました。
この検証論文はまだ上がっていないのですが、
もしその仮説が正しいとすると、長年、手術体位によると結論づけられてきた、
肩の痛みについては手術侵襲によるものとなり、
改善方法としては体位の検討ではなく、開創方法をどうするかという
議論に転換されるかと思います。
あるいは術後の急性疼痛である事が多いので、
横隔神経ブロックや局所麻酔剤のキシロカイン浸潤なども選択肢に上がるかもしれませんね。
もうちょっと調べていこうかなと思いますが、
研究は正直面倒くさいですね。迷い中です。