クラッシュ挿管
うちの病院では緊急手術をよく受けるため、胃の中に内容物が多く残ったまま、
手術をしなければならない時があるんです。
その場合、麻酔科医からは「クラッシュでお願いします」なんて言われることがあります。
施設によっては「ラピッド」なんて言い方をするところもあるかもしれないですね。
要するにフルストマック(胃の中に食残がいっぱいある)のため、
挿管の刺激などで、反射がおこして、食べ物を吐いたら、
誤嚥をして肺炎になってしまうかもしれない。
そこで、挿管の時に喉を押して、せきとめてくださいという具合なわけです。
そして、きわめて迅速に導入しますよーと。
しかし、これを指導しようとしたときに、以外に説明が難しい。
喉といっても具体的にはどのあたりなのか・・・。とか。
甲状軟骨ではなく、輪状軟骨をおしてねーといいます。
そして、力強く押すのではなく、適度な圧力で押すように指導する場合、
一般的には30Nと言われているんですが「はぁ???」となります。
厳密には3.05kgなのですが、約3kgと教えます。
では3kgをどうやって教えるかというと、手術室には出血量をカウントするための、
はかりが置いてあるので、それを実際に押してもらって3kgが表示される感覚を身につけて
もらいます。そうでもしないと3kgなんて感覚はわかりませんよね。
これは押しすぎると声門がつぶれて挿管が難しくなるので、やはり意識は3kgなのです。
そして、もうひとつ大事なことが、眠ってから突然、輪状軟骨を押そうとしても
わかりにくいことがあるため、起きている時に輪状軟骨の位置を触診で確認しておくことです。
そうすると眠った直後にピンポイントで押すことができますから。
あとカフは10mlでって教える人もいるんですが、これもやはり不適切な気がします。
挿管チューブが適正なサイズでなかった場合、10mlで足りないことが考えられるからですね。
カフがパンパンになるまでというのが正しいかと思います。
このパンパンは主観なので、どれくらいのパンパンかは実際にカフを膨らませたときに
教えてあげるのがいいのではないでしょうか。