自家発光する異所性副甲状腺

2021年6月3日 0 Comments

今日も珍しい手術のお話を1つしたいと思います。

手術申し込みは縦隔腫瘍摘出術でしたが、

この腫瘍は異所性副甲状腺腫瘍(疑い)というものでした。

要するに本来は甲状腺の上に米つぶほど4つか5つある副甲状腺ですが、

これがなんらかの原因で縦隔に出来てしまったという病態です。

縦隔腫瘍自体はきわめて7肋間とか8肋間とかの肋間から3ポートを作って、

わりと簡単にとることができるのですが、

今回の場合は異所性の副甲状腺ということもあり、

拡大摘出後にPTH採血試験と迅速病理検査をやることとなりました。

また、摘出検体をPDE(赤外観察カメラ)を使用することで、自家発光する副甲状腺を観察できるとのことでした。

PTHは副甲状腺ホルモンを値をみる検査で、今回の場合、術前が450以上と異常高値をしめしていました。

原因は余計な副甲状腺があることなので、縦隔にできた副甲状腺を摘出して、

PTHが下がれば、手術をそれで終わりということになります。

もし、PTHが下がらなければ、高値の原因は副甲状腺の本体にある可能性があるので、

副甲状腺摘出するというものでした。

完全に摘出できているかどうかはPDEで観察を行うということでした。

加えて、珍しかったのが、PTHが下がらず副甲状腺も摘出となった場合、

一部の副甲状腺は前腕の三角筋に埋め込み、移植する予定ということ。

それにより、正常の副甲状腺ホルモンを分泌できるのだとか。

結局、手術は1時間ほどで腫瘍摘出できました。

摘出検体にPDEを励光されると ボヤーーーーっと自家発光していました。

ICGとか使用しなくても発光するのはとても驚きました。

ICGの蛍光波長帯と近い領域だから観察できるんだとか。

迅速病理結果は分泌物様の検体であると。

PTHはなんと1/3まで下降しました。

正常値になったことで、手術は終了したので自家移植はしかなかったのですが、

しかしながら、とれているかどうかをPDEで確認できるというのは

本当に機器だなぁと思いました。

このPDEをはじめとする赤外観察ですが、

前のブログでも少し話しましたが、これにより腹腔鏡の肝前区域切除が可能となりました。

脳外科、胸部外科、耳鼻科、外科(肝臓)などなど多くの診療科で使用されています。

手術室でも使用する分野はどんどん拡大しているので、

今後はウロの腎臓とか他の科でも使用されることがあるかもしれませんね。

 

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