局所麻酔薬の極量と表面麻酔の極量
手術室にいるとさけてはとおれない、局所麻酔剤のお話です。
私はよく若い子たちに1%キシロカインは何ml使えるのかを聞きます。
次に1%E入りキシロカインだったら何ml使えるのかも合わせて聞くようにしています。
というのはこの局所麻酔が実はとても恐ろしいことを知っているからです。
このブログでも再三、局所麻酔の外回りの難しさについてお話していますが、
何よりも局所麻酔中毒が恐ろしいからです。
なぜ恐ろしいかというと、起こってしまうと対処方法がないうえに
重症症状となると心静止を引き起こしたりと命取りになる恐れもあるからです。
一般的には、唇のしびれや苦味などの症状訴えるところからはじまったり、
せん妄症状がでることもあります。
だいたいこのあたりで気づいて使用をやめて経過をみることが多いです。
私の病院でも1年に1~2件くらいは中等度くらいの局所麻酔中毒が起きていると思います。
整形外科の四肢の手術などで、使用量がかさんで発症するケースが散見されます。
整形外科領域で一番こわかったのが、
局所静脈麻酔をした時のとこです。
この麻酔の場合、最初に手背などに静脈ラインをいれます。
次に上腕にターニケットをまいて、駆血します。
だいたい250mmhg程度で駆血したら、局所麻酔薬を静脈注射します。
これにより、駆血以下に麻酔がかかるという仕組みです。
実はこのときにターニケットの内側のプラスチックが表裏逆につけられており、250mmhgまで上がっているにも関わらず、実際には駆血されていなかったのです。
要するにダイレクトに局所麻酔剤が静脈にはいって、
すぐに局所麻酔中毒を発症しました。幸い不整脈までには至らなかったのですが、
せん妄症状が強く、結果リカバリーに5時間くらい要したことがありました。
本当に怖い話です。
それ以外だと、心臓外科で静脈瘤の手術をするのですが、
この手術でレーザーを使用したいとなったときに、局所麻酔剤を大量に使うため、
加圧バックで使いたいというのです。
範囲が広く、局所注入が大変という理由からですが、
流石に、加圧バッグだと量のコントロールができないので勘弁してくださいと断りました。
局所麻酔の怖さを知っているからこそです。
さて、本題の1%キシロカインの極量ですが体重50kgの人でおよそ30ml程度。kg/6~7mlくらいでしょうか。
これがE入りだと血管収縮して吸収がされないという理由で少し増えてkg/9ml 40ml程度。
半減時間もあるので、使用時間にもよりますが、それらを理解したうえで外回りをしないと危険ですね。
では眼科で使用する4%点眼キシロカインは10mlも使えないということになりますが、
点眼はキシロカインは表面麻酔のなので、使用量の上限はないということです。
たくさんつかってもほとんど流れ落ちてますからね。
だいたい、このことを合わせて聞くと若い子たちはひっかかってくれます。
性格悪いですかね?